のどかな分譲地に建つ住宅です。丘の裾野にある敷地は、立って360度見回すと、牧歌的な風景、街路樹、光に照らされた隣地の擁壁…多様な景色が見つかります。そんな環境に包まれるように暮らせればと思い、程よく囲われた、けれども外のような場所=広間を作り出すよう、敷地に木箱をいくつか据えました。木箱の中は用途がはっきりしており、仕上げも施されています。一方、木箱の外側=広間側は柱や梁が剥き出しです。現しになった躯体を拠り所に住み手が自由に飾り、収納します。彼らは東日本大震災で家を失いました。ビニールクロスの裏に隠れていたコンクリートがいとも簡単に壊れ、姿を現したそうです。そんな彼らにとって構造体が身近にあり、触れる事はとても重要だと考えました。広間にいると色んな景色が楽しめますし、光に包まれ風が通り抜けます。そんな中で大好きな漫画に囲まれ、読みふける。そんな平穏な時間こそ復興の原点になると感じます。